飲食店開業にかかる予算:ゼロから始める店舗づくりの費用ガイド
飲食店の開業は、夢と情熱を形にする素晴らしい挑戦です。しかし、その夢を実現するためには、現実的な資金計画が不可欠です。特にゼロから店舗を立ち上げる場合、想像以上に多岐にわたる費用が発生します。
このガイドでは、飲食店をイチから作る際に必要となる主要な費用項目を詳細に解説し、予算の目安や資金調達のポイントまで、経営者の皆様が知っておくべき情報を網羅的にご紹介します。

1. 主要な費用項目:何にいくらかかるのか?
飲食店の開業費用は、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2つに分類されます。
1.1. 初期費用(開業前に一度だけ発生する費用)
① 物件取得費
店舗の場所を確保するための費用で、最も大きな割合を占めることが多いです。
- 保証金・敷金: 家賃の数ヶ月分(3~12ヶ月分が目安)。退去時に一部が返還される性質のものですが、初期の負担は大きいです。
- 礼金: 家賃の1~2ヶ月分が目安。返還されない費用です。
- 仲介手数料: 不動産会社に支払う手数料。家賃の1ヶ月分+消費税が一般的です。
- 前家賃: 契約時に翌月分の家賃を支払うことが多いため、初月分と合わせて2ヶ月分の家賃が必要になります。
- 造作譲渡費(居抜き物件の場合): 前のテナントが設置した内装や設備を買い取る費用。初期費用を抑えられるメリットがありますが、状態の見極めが重要です。
② 内装・設備工事費
店舗のコンセプトや業態に合わせて、空間を作り上げるための費用です。
- 設計費: デザイナーや設計事務所に支払う費用。工事費の10~15%が目安です。
- 内装工事費: 壁、床、天井、照明、カウンター、客席などの工事費用。
- スケルトン物件の場合: 何もない状態から作り上げるため、坪単価30万~80万円以上と高額になりがちです。高級店や特殊な内装を求める場合はさらに跳ね上がります。
- 居抜き物件の場合: 既存の内装を活かすため、坪単価10万~30万円程度で抑えられる可能性があります。
- 厨房設備費: 業務用冷蔵庫、冷凍庫、ガスレンジ、オーブン、食洗機、シンク、調理台など。
- 新品で揃えると数百万円かかることも珍しくありません。中古品やリースも検討の余地があります。
- 空調・電気・ガス・給排水設備費: 店舗の規模や既存設備の状況により大きく変動します。特にスケルトン物件では、これらのインフラ整備に多額の費用がかかることがあります。
- 外装工事費: 看板、エントランス、外壁など、店舗の顔となる部分の費用。
③ 什器・備品費
店舗運営に必要な細かな備品や家具の費用です。
- テーブル・椅子: 客席数やデザインにより変動。
- 食器・グラス・カトラリー: 業態やコンセプトに合わせて選定。初期在庫としてある程度の量を揃える必要があります。
- 調理器具・消耗品: 包丁、鍋、フライパン、トング、タオル、洗剤など、日々の業務に必要なもの。
- POSシステム・レジ: 注文管理、会計、売上分析に必須。導入費用に加え、月額利用料がかかる場合もあります。
- 音響・照明設備: 店舗の雰囲気作りに貢献します。
④ その他諸経費
開業に際して発生する、上記以外の費用です。
- 許認可取得費: 飲食店営業許可、食品衛生責任者、防火管理者などの資格取得や申請費用。
- 保険料: 火災保険、賠償責任保険など。
- 開業コンサルティング費用: 専門家に依頼する場合の費用。
- 物件調査費・契約書作成費用: 弁護士や行政書士に依頼する場合。
1.2. 運転資金(開業後に継続的に発生する費用)
開業直後は売上が安定しないことが多いため、最低でも3~6ヶ月分の運転資金を確保しておくことが重要です。
- 人件費: スタッフの給与、社会保険料など。
- 仕入れ費: 食材、ドリンク、消耗品などの購入費用。
- 家賃: 毎月の賃料。
- 水道光熱費: 電気、ガス、水道料金。
- 広告宣伝費: 開業告知、チラシ、ウェブサイト、SNS広告、グルメサイト掲載料など。
- 通信費: 電話、インターネット回線費用。
- 消耗品費: トイレットペーパー、洗剤、ナプキンなど。
- 予備費: 想定外のトラブルや急な出費に備える費用。総予算の10~20%を目安に確保しておきましょう。
2. 予算の目安:業態と規模による違い
飲食店の開業費用は、業態や店舗の規模(坪数)によって大きく変動します。
業態 | 坪単価目安(内装工事費) | 総開業費用目安(20坪の場合) | 主な特徴 |
---|---|---|---|
カフェ・軽飲食店 | 15万~40万円 | 500万~1,500万円 | 厨房設備が比較的シンプル。内装もカジュアルな傾向。 |
居酒屋・大衆食堂 | 20万~50万円 | 800万~2,000万円 | 厨房設備が充実。客席数が多い場合も。 |
レストラン(カジュアル) | 30万~60万円 | 1,000万~2,500万円 | 内装デザインにこだわり、厨房も本格的。 |
レストラン(高級・専門) | 50万~100万円以上 | 2,000万~5,000万円以上 | 内装、設備、食器など全てに高品質を求める。 |
総開業費用 = 物件取得費 + 内装・設備工事費 + 什器・備品費 + 許認可費 + 運転資金(3~6ヶ月分)
例えば、20坪のカジュアルな居酒屋をスケルトン物件で開業する場合、内装工事費だけでも600万~1,000万円かかる可能性があります。これに物件取得費や厨房設備、運転資金を加えると、総額で1,500万~2,500万円程度の予算が必要となるケースが多いでしょう。
3. 資金調達の選択肢
開業資金を全て自己資金で賄うのは難しい場合がほとんどです。以下の方法を組み合わせて資金を調達することを検討しましょう。
- 自己資金: 最も重要です。金融機関からの融資を受ける際にも、自己資金の割合が高いほど有利になります。
- 日本政策金融公庫: 新規開業支援に積極的で、低金利で融資を受けやすいのが特徴です。まずは相談してみることをお勧めします。
- 銀行・信用金庫: 事業計画の信頼性が重視されます。実績がない新規開業の場合、保証協会付き融資などが一般的です。
- 補助金・助成金: 国や地方自治体が提供する制度で、返済不要な資金です。ただし、特定の条件を満たす必要があり、申請から受給までに時間がかかる場合があります。
- クラウドファンディング: インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る方法。店舗のコンセプトやストーリーに共感してもらうことで、資金だけでなくファンを獲得できる可能性もあります。
4. 予算計画の重要性と成功へのヒント
飲食店の開業は、多額の投資を伴うため、綿密な予算計画が成功の鍵を握ります。
- 詳細な事業計画書の作成: 費用の内訳だけでなく、売上予測、損益分岐点、資金繰り計画などを具体的に盛り込みましょう。これは資金調達の際にも必須となります。
- 複数の見積もりを取る: 内装業者や厨房機器業者など、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することでコストを最適化できます。
- 中古品やリースも視野に: 全てを新品で揃える必要はありません。状態の良い中古品や、初期費用を抑えられるリース契約も有効な選択肢です。
- 予備費の確保: どんなに綿密な計画を立てても、想定外の出費はつきものです。必ず総予算の10~20%程度の予備費を確保しておきましょう。
- 専門家への相談: 不動産、設計、税務、融資など、各分野の専門家(不動産会社、設計士、税理士、中小企業診断士など)に相談することで、リスクを減らし、スムーズな開業を目指せます。
まとめ:賢い投資で夢を実現する
飲食店の開業は、大きな投資ですが、適切な予算計画と賢明な資金調達、そして何よりもお客様に最高の体験を提供したいという情熱があれば、必ず成功へと繋がります。
X-unicornでは、飲食店経営者の皆様が抱える資金計画や店舗運営の課題に対し、具体的なアドバイスと実践的なサポートを提供しています。ワインリストの最適化から、効果的な集客戦略、スタッフ教育まで、貴店の「夢」を「現実」に変えるお手伝いをさせていただきます。
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